電子公告 他の公告方法(官報公告、新聞公告)との共通点と相違点について

第1 共通点

1 登記

 いずれの公告方法でも必要的記載事項となります。(会社法911条3項27号、29号)

  • 会社法 九百十一条(株式会社の設立の登記)

3 二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
  二十九 第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

2 「公告方法の変更」登記申請費用

 登録免許税は、同じく1件につき、3万円です。(登録免許税法「別表第一」の24(一)ツ)

  • 登録免許税法「別表第一」

24 会社又は外国会社の商業登記・・・及び一般財団法人・・・
 (一)会社・・・につきその本店又は主たる事務所の所在地においてする登記
  ((四)に掲げる登記を除く。)

  ツ 登記事項の変更、消滅又は廃止の登記(・・・イからソまでに掲げるものを除く。)
    申請件数  一件につき三万円

3 期間計算

(1)原則

 いずれも、民法第1編第6章 期間の計算が適用されます。

(2)例外

 後述(第2 相違点)の様に、電子公告では午前0時から公告を行うことが可能です。
 そのため、140条の適用においては、異なり得ます。

  • 民法 第1編第6章 期間の計算

一三八条(期間の計算の通則)
 期間の計算方法は、・・・特別の定め・・・又は・・・別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
     
一三九条(期間の起算)
 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

一四〇条
 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。
 ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

一四一条(期間の満了)
 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

一四二条
 期間の末日が日曜日・・・その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

一四三条(暦による期間の計算)
 1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。

 2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。
  ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

4 公告内容

(1)原則

 それぞれの、公告根拠条項において要件とされている内容を公告することになります。
 よって、公告根拠条項において要件とされている内容が異なるような例外的な場合でない限り、公告方法によって最低限必要な公告内容が異なることはありません。(会社法939条参照)

  • 会社法 九百三十九条(会社の公告方法)

1 会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
 一 官報に掲載する方法
 二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
 三 電子公告

4 第一項又は第二項の規定による定めがない会社・・・の公告方法は、第一項第一号の方法とする。

(2)例外

 例えば、決算公告については、官報や新聞では要旨で足りるものとされています。
 他方、電子公告では、そのような定めがなく、全文の掲載が必要です(440条2項)。

  • 会社法 四百四十条(計算書類の公告)

1 株式会社は、・・・、貸借対照表・・・を公告しなければならない。

2 ・・・公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。

5 公告開始日

 いつから公告を掲載するかを決定する必要がある点について、異なるところはありません。

6 役員等の第三者に対する損害賠償責任

 この場合、公告方法によって区別はされていません。(429条1項1号ニ)

  • 会社法 四百二十九条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)

1 役員等・・・は・・・これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。
  ただし、・・・注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
 一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
  ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)

7 罰則(共通)

 「公告を怠ったとき」又は「不正の公告をしたとき」
 この場合、公告方法によって区別はされていません。(976条2号参照)

  • 会社法 九百七十六条(過料に処すべき行為)

・・・取締役・・・は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。
ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
 二 この法律の規定による公告・・・を怠ったとき、又は不正の公告・・・をしたとき。

第2 相違点

1 公告方法の定め

 定めを設けなかった場合、自動的に官報が公告方法となります。(911条3項29号、939条4項)
 そのため、電子公告(又は新聞公告)を公告方法とする場合は、定款による定めが必要です。(911条3項27号、28号)

  • 会社法 九百十一条(株式会社の設立の登記)

3 二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
  二十九 第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

  • 会社法 九百三十九条(会社の公告方法)

1 会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
 一 官報に掲載する方法
 二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
 三 電子公告

3 会社・・・が第一項第三号に掲げる方法を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。

4 第一項又は第二項の規定による定めがない会社・・・の公告方法は、第一項第一号の方法とする。

2 公告費用

(1)官報公告・新聞公告

 一般的に紙面に占めるスペース(行数、枠数、段数など)により、掲載費用が異なります。

(2)電子公告

 電子公告では、調査期間中はシステムを稼働させる必要があります。
 加えて、調査の結果等を記録し、内容ごとに1年から10年の間、保存する義務があります。
 (電子公告規則5条、10条、13条)
   
 つまり、調査機関にとっては調査期間が長くなるほどコストがかかります。
 そのため、一般的には調査を求める期間の長短により、調査費用が異なることになります。

  • 電子公告規則 五条(電子公告調査を行う方法)

1 法第九百四十六条第二項・・・に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
 一 次に掲げる作業を電子計算機に自動的に行わせること。
  イ ・・・電子公告による公告の公告期間中、・・・次に掲げる作業を行うこと。
   (1)公告サーバから情報を受信することができた場合には、・・・記録すること。
   (2)公告サーバから情報を受信することができなかった場合には、・・・記録すること。
  ロ イ(1)に規定する場合には、・・・判定の結果及び日時を・・・記録すること。
 二 前号ロの規定による・・・場合には、・・・、判定の結果及び日時を・・・記録すること。
 三 第一号イ(2)に規定する場合又は・・・自動的に行うことができなかった場合には、・・・同号イ及び前号に掲げる作業を行うこと。
 四 登記アドレスと公告アドレスとが異なる場合・・・その調査の結果を・・・記録すること。
 五 第二号若しくは第三号に掲げる作業を行った場合又は前号に規定する・・・行った場合には・・・記録すること。

2 情報入手作業は、・・・公告サーバに対し情報を送信するように求めることによって行わなければならない。
  ・・・当該公告アドレスを変更する旨の通知がされ・・・たときは、その時・・・変更後の公告アドレスを電子計算機に入力しなければならない。

3 ・・・公告の中断が生じた場合・・・「公告情報及び追加公告情報と」 と、・・・「公告情報内容及び追加公告情報内容」とする。

4 調査機関は、・・・作業のいずれかをすることができなかった場合には、その旨・・・を・・・記録・・・しなければならない。

  • 電子公告規則 十条(業務規程)

1 調査機関は、法第九百四十九条第一項の規定による届出をしようとするときは、・・・届出書を法務大臣に提出しなければならない。

2 法第九百四十九条第二項の法務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
 十 次に掲げる記録の作成及び保存に関する事項
  イ 第四条第二項第四号に掲げる書面の変更記録
  ロ 電子計算機が設置された区域への立入りに関する記録(映像によるものを除く。)
  ハ 電子計算機の操作に関する許諾及び当該許諾に係る識別符号に関する記録
  ニ 電子計算機の動作に関する記録
  ホ 電子計算機及びプログラムについて、不正アクセス行為・・・を受けたとき・・・に係る記録
  ヘ 電子計算機その他の設備の維持管理に関する記録
  ト 電子公告調査の業務に従事する者に対する教育及び訓練の実施結果に関する記録
  チ 電子公告調査の業務に係る事故に関する記録
  リ 電子公告調査の業務の監査の実施結果に関する記録
  ヌ イからリまでに掲げる記録の管理に関する記録
 
3 前項第十号に規定する事項は、・・・三年間、・・・一年間保存する旨を含むものでなければならない。

  • 電子公告規則 十三条(調査記録簿等の記載等)

2 法第九百五十五条第一項の電子公告調査に関し法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 一 第三条第一項各号に掲げる事項(・・・変更後のもの及び変更の日時を含む。)
 二 電子公告調査を求められた年月日
 三 電子公告調査の業務を行った事業所の所在地
 四 電子公告調査を行った職員の氏名(第五条第一項第五号に規定するものを除く。)
 五 第五条第一項各号の規定により電磁的記録として記録した事項
 六 第五条第四項の規定により電磁的記録として記録・・・した事項
3 調査記録簿等への前項に掲げる事項の記載又は記録は、電子公告調査の求めごとにしなければならない。
4 調査機関は、第二項に掲げる事項を記載し、又は記録した調査記録簿等を、・・・公告期間の満了後十年間保存しなければならない。

3 初日不算入(民法140条)

(1)官報公告・新聞公告

 事実上、同条本文のみが適用されます。つまり初日が期間に算入されることはありません。

(2)電子公告

 同条本文のほか、「午前零時」に掲載した場合は、同条ただし書が適用され、初日が期間に算入されることがあります。

4 公告手段

 公告内容によっては、電子公告では、公告したことにならない場合があります。
 (例:解散公告(会社法499条1項))

  • 会社法 四百九十九条(債権者に対する公告等)

 清算株式会社は、・・・官報に公告・・・しなければならない。

5 公告期間、継続性

 電子公告では、公告期間中、原則として継続して公告を掲載する必要があります。
 また、電子公告調査の始期に加え、終期を明確にしておく必要があります。(会社法940条)

  • 会社法 九百四十条 (電子公告の公告期間等)

1 ・・・電子公告・・・をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間、継続・・・しなければならない。
 一 この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告
   当該特定の日
 二 第四百四十条第一項の規定による公告 
   同項の定時株主総会の終結の日後五年を経過する日
 三 公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告
   当該期間を経過する日
 四 前三号に掲げる公告以外の公告
   当該公告の開始後一箇月を経過する日

6 電子公告調査の求め

 電子公告では、官報や新聞公告掲載と異なり、登記アドレスや公告アドレス、公告根拠条項などを、調査機関に示して、調査を求める必要があります。(規則3条)

  • 電子公告規則 三条(電子公告調査を求める方法)

・・・電子公告調査を求めようとする者・・・は、調査機関に対し、・・・次に掲げる事項を示して、電子公告調査を求めなければならない。
 一 当該調査申請者の氏名又は商号・・・住所・・・代表者の氏名・・・
 二 当該調査申請者に係る登記アドレス。
   ただし、法第四百四十条第一項の規定による公告のためのものを除く。
 三 当該電子公告調査の求めに係る電子公告についての事項であって、次に掲げるもの
  イ 公告アドレス
  ロ 公告期間
  ハ 公告しようとする内容である情報
  ニ 公告すべき内容を規定した法令の条項

7 罰則(特則)

 941条の規定により、電子公告調査を求めなかった場合
 上記(第1 共通点 )に加えて罰則が設けられています。(会社法976条35号)

  • 会社法 九百七十六条(過料に処すべき行為)

三十五 第九百四十一条の規定に違反して、電子公告調査を求めなかったとき。