電子公告 電子公告の要否と可否について

 当然のことながら、電子公告を公告すべき方法をして採用していても、法令上電子公告することが要求されていない場合は、電子公告をすることは義務となりません。
具体的には下記のようなものがありますが、いくつかの注意が必要です。

第1 法令上、「官報」のみで公告すべきとされているケース

  • 例)解散公告(会社法499条)

 この公告は仮に電子公告をしたとしても、法定公告とはなりませんので、注意が必要です。

第2 公告か通知かを選択できるケース

1 原則

  • 例)反対株主の株式買取請求公告

 「存続株式会社等が、公開会社である場合など」(会社法797条4項1号)は、会社法797条3項の通知に代えて公告を選択することができます(同条4項)。

2 例外

 上記1にあたる場合でも、上場会社など振替株式を発行している会社は、これらの規定による通知(当該振替株式の株主又はその登録株式質権者に対してするものに限ります。)に代えて、当該通知をすべき事項を公告しなければならず、通知を選択することはできないので注意が必要です(社債、株式等の振替に関する法律 161条2項)。

第3 官報公告に加えて、個別催告を省略したいケース

  • 例)資本金の額の減少公告

 会社法449条2項により、定款に定めた公告方法に係らず、先ずは官報公告が必須になります。そして、個別の債権者に対する催告を省略したい場合は、加えて電子公告又は新聞公告(新聞公告を公告方法として定めている場合)を行うことにより、同催告を省略することができます。つまり、必ずしも官報に加えて電子公告又は新聞公告をしなければならないわけではありません。

第4 法令上、公告、通知、催告のいずれも要求されていないケース

 当たりまえのことなのですが、次の場合などは紛らわしいため注意が必要です。

  • 吸収分割(会社法2条29号)において、重畳的債務引受(並存的債務引受(民法470条))を契約内容とする場合

吸収分割会社 = 債権者向け公告不要(会社法789条1項2号、2項柱書本文)
吸収分割承継会社 = 債権者向け公告必要(会社法799条1項2号、2項柱書本文、3項)

第5 法令上、一定の要件を満たせば、公告をしなくてもよいとされているケース

  • 例)募集株式の発行(会社法201条5項)

 「株式会社が募集事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。」とされており、「法務省令で定める場合」とは、会社法施行規則40条で規定されています。
 大雑把に言えば、EDINETにより有価証券届出書、半期報告書、四半期報告書等を提出するような、比較的高額で多人数に発行する場合には、例外的に公告が不要となります。
 ただ、具体的に会社法201条5項に該当するかどうかは、金額・人数・期間などにより相関的に決せられますので、注意が必要です。
※ 参考:関東財務局ホームページ

第6 法令上、要求されている「電子公告」の種類が異なるケース

 同じ「電子公告」という語を用いてあっても、会社法上の「電子公告」(同法2条34号)と、金融庁が運営するEDINET上の「電子公告」とは異なりますので、注意が必要です。
 つまり、公告の内容によっては、(例外的に)会社法に基づく電子公告を行っても有効な公告とはならず、商品取引法施行令に基づく公告をしなければならないこととなります。

  • 会社法 第二条(定義)

三十四 電子公告
 公告方法のうち、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法をいう。

  • 金融商品取引法施行令 第九条の三(公開買付開始公告等)

 法第二十七条の三第一項、第二十七条の六第二項、第二十七条の八第十一項、第二十七条の十第四項、第二十七条の十一第二項及び第二十七条の十三第一項の規定による公告は、次のいずれかの方法によりしなければならない。
一 内閣府令で定めるところにより、開示用電子情報処理組織を使用する方法により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置をとる方法(第三項から第五項までにおいて「電子公告」という。)

※ 参考:金融庁ホームページ
  注)現在(2021年6月1日時点)、開示内容につき見直しが検討されています。