電子公告 電子公告の期間について

第1 電子公告の特性

 電子公告は、いったん公告を掲載すれば足りる官報、新聞と異なり、継続して公告を掲載し続ける必要があります(※1)。

第2 継続が必要な期間

 公告期間の総則としては会社法(平成十七年法律第八十六号)940条1項及び2項に定めがあります。

(第九百四十条)
「株式会社又は持分会社が電子公告によりこの法律の規定による公告をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。
 一 この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告 当該特定の日
 二 第四百四十条第一項の規定による公告 同項の定時株主総会の終結の日後五年を経過する日
 三 公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告 当該期間を経過する日
 四 前三号に掲げる公告以外の公告 当該公告の開始後一箇月を経過する日

2 外国会社が電子公告により第八百十九条第一項の規定による公告をする場合には、同項の手続の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。」

第3 電子公告調査との関係

 株式会社又は持分会社においては940条1項2号の公告(決算公告)については例外として、電子公告の調査は義務付けられていません(941条括弧書)(※2)。
 すると、電子公告調査との関係では、940条1項1号、3号、4号が問題となります。そして、具体的な公告期間は940条の総則規定と個別の公告根拠条項との関係により決定されます。

第4 940条1項各号 ごとの具体的公告期間

1 1号「この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告 当該特定の日」

(1)原則

 例えば、基準日設定公告では124条3項が公告根拠条項となります。
 そして、同条項本文では、
「株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。」
と規定されています。つまり、この場合の公告期間は当該基準日の2週間前までが公告開始日となり、公告終了日は「当該特定の日 」である「当該基準日」となります。よって、法定の最短の公告期間は15日間ということになります。

(2)例外

 本来、上記(1)のとおり、当該特定の日まで公告を継続しなければならないのですが、解釈により当該特定の日の前日まで継続することでも足りるとされているケースもあります。

①-1  反対株主の株式買取請求の例 ― なぜ、問題となるのか。 ―

 例えば、会社の吸収合併消滅会社に対する反対株主の株式買取請求の公告では、785条3項及び4項が公告根拠条項となります。
 そして、同条項では、次のとおり規定されています。

「3 消滅株式会社等は、効力発生日の二十日前までに、その株主(第七百八十三条第四項に規定する場合における同項に規定する持分等の割当てを受ける株主及び第七百八十四条第一項本文に規定する場合における当該特別支配会社を除く。)に対し、吸収合併等をする旨並びに存続会社等の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。
4 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。」

 ここで、「当該特定の日」とは、「効力発生日」ですから 、その日まで公告を掲載すべきとも読み取ることができようにも思えます。
 他方、反対株主の株式買取請求の期間は同条5項により、次のとおり規定されています。

「5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。」

 すると、「当該特定の日」である「効力発生日」には、既に買取請求ができる期間を過ぎてしまっています。
 しかも、仮に公告しようにも吸収合併の消滅会社は効力発生日には、会社自体が消滅してしまっています。
   
 このようなことから、効力発生日の前日まででも足りると解釈されています。

①-2 反対株主の株式買取請求の例 ― なぜ、問題となるのか。 ―

 上記(2)のとおり、解釈により当該特定の日の前日まで継続することでも足りるとされているケースとしては、吸収合併存続会社に対する反対株主の株式買取請求の公告では、797条3項及び4項が公告根拠条項となります。そして、同条項では、次のとおり規定されています。

「3 存続株式会社等は、効力発生日の二十日前までに、その株主(第七百九十六条第一項本文に規定する場合における当該特別支配会社を除く。)に対し、吸収合併等をする旨並びに消滅会社等の商号及び住所(第七百九十五条第三項に規定する場合にあっては、吸収合併等をする旨、消滅会社等の商号及び住所並びに同項の株式に関する事項)を通知しなければならない。
4 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
 一 存続株式会社等が公開会社である場合
 二 存続株式会社等が第七百九十五条第一項の株主総会の決議によって吸収合併契約等の承認を受けた場合」

 ところが、796条3項では、次のとおり規定されています。

「3 前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。」

 ここで、796条と797条の関係の理解から、公告開始日と公告終了日は、次のような解釈が考えられます。

  • 公告終了日の前日から逆算した20日間が公告期間

 仮に反対数が一定数に達した場合(796条3項)には、株主総会を開催することとなり買取請求権が復活することなどから、法の文言を重視したものと考えることができます。

  • 公告開始日から2週間が公告期間

 買取請求ができない場合(796条2項)にも公告が必要であることから、反対株主による株主総会での議決権を行使できる権利の確保を重視したものと考えることができます。
 理由としては、仮に株主総会を開催することになった場合、招集通知は原則として2週間前に発しなければなりません(299条1項)。すると、現実的には、効力発生日が遅くなり、その結果 買取請求期間もずれてしまうことが、十分考えれます。また、会社法ができる前には、商法によって公告期間が定められており、そこでの公告期間は公告日から2週間でした。

  • 実際に公告した日から効力発生日の前日までが公告期間

 上記2つの期間を包含していることから、いずれに解釈された場合にも適法となり、違法とされるリスクを回避することを重視したものと考えることができます。

①-3 反対株主の株式買取請求の例(新設合併等の場合) ― なぜ、問題となるのか。 ―

 新設合併等の場合は、上記①-1、2 と異なり、買取請求期間は公告した日から起算されます(806条5項)。

第八百六条(反対株主の株式買取請求)
「新設合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
 一 第八百四条第二項に規定する場合
 二 第八百五条に規定する場合
3 消滅株式会社等は、第八百四条第一項の株主総会の決議の日から二週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社(以下この節において「消滅会社等」という。)及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第三項の規定による通知又は前項の公告をした日から二十日以内に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。」

 買取請求期間が公告日から起算される、このような場合は、「当該特定の日」は新設合併等の「効力発生日」とは考えず、買取請求期間が満了する日と考えることができるので、新設合併等の「効力発生日」まで公告を継続する必要はなく、公告をした日から20日間が公告期間になります。

② 登記申請手続きとの関係  ― なぜ、問題となるのか。 ―

 例えば、株券を発行する旨の定款の定めの廃止に関する公告につき、公告根拠条項としては218条です。
 その登記申請には、実際に株券を発行していない場合を除き、218条1項の「公告をしたことを証する書面」として、電子公告調査結果通知を添付することが必要です。(商業登記法63条)

第二百十八条(株券を発行する旨の定款の定めの廃止)
「株券発行会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の二週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。
 一 その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
 二 定款の変更がその効力を生ずる日
 三 前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨
2 株券発行会社の株式に係る株券は、前項第二号の日に無効となる。
3 第一項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第二号の日の二週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第一号及び第二号に掲げる事項を通知すれば足りる。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。」

 もし、原則どおり、「当該特定の日」である「定款の変更がその効力を生ずる日」まで公告を継続しなければならないとすると、その日に登記申請ができなくなってしまいます。
 
 なぜなら、官報や新聞公告と異なり、電子公告では制度上、公告が終了した後でないと、調査結果通知を発行できないからです。また、「定款の変更がその効力を生ずる日」には、株券が無効となっていますから、その日まで公告を継続すべき合理的な理由に欠け、前日で打ち切る許容性が認められます。
 そのため、効力発生日の前日まで、公告を継続すれば足りると解されています。

2 3号「公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告 当該期間を経過する日」

(1)当該期間を経過する日

 例えば、資本金の額の減少公告では449条3項が電子公告の公告根拠条項となります。ただ、官報では2項が根拠条項となりますので、2項と3項を併せて読むと、
「2 前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。
 一 当該資本金等の額の減少の内容
 二 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
 三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。」

 ここで、「当該期間を経過する日」とは、具体的には いつを指すのでしょうか。ここでも、本公告の趣旨が、債権者の保護を図るためのものであることから、異議を述べることができる期間の末日をもって、「当該期間を経過する日」であると解釈されています。

(2)期間の計算

 次に「一箇月を下ることができない。」とは、どういう意味でしょうか。ここで、会社法や、商法(明治三十二年法律第四十八号)には具体的な定めがありません。
 そこで、民法(明治二十九年法律第八十九号)の期間計算の通則(第1編 第5節 第6章)の規定に従うことになります。

  • 一箇月

 これは「月」をもって期間を定めたときに当たります。すると、期間は暦に従って計算することになりますから、期間計算の初日の応当日の前日をもって、一箇月の期間が満了することになります。
 例えば、11月3日が初日とした場合、応当日は12月3日となり、その前日である12月2日が満了日、すなわち、電子公告の終了日となります(民法141条、143条)。

  • 期間の末日が、日曜日などに当たる場合

 この場合は、その翌日が満了日になるので注意が必要です(142条)。なお、土曜日は、ここでいう休日には当たらないと解されています。

  • 開始日

 午前0時ちょうどに電子公告を掲載する場合でない限り、その日は期間計算には算入されません(140条本文)。

「(期間の計算の通則)第百三十八条 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
(期間の起算)第百三十九条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
(期間の満了)第百四十一条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。第百四十二条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
(暦による期間の計算)第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」

3 4号 「前三号に掲げる公告以外の公告 当該公告の開始後一箇月を経過する日」

 上記2の3号と、ほぼ同様に考えることができます。違いは、公告内容が「公告に定める期間内に異議を述べることができる」ものではない点にあります。
 具体的な例としては、責任追及等の訴え(会社法849条5項)があります。この公告の趣旨は、同条が民事訴訟法(平成八年法律第百九号)42条及び52条の特則を設け、「法律上の利害関係」(42条)を有するか否かにかかわらず株主・株式会社が、責任追及等の訴えに、共同訴訟参加ないし補助参加できることに鑑み、公告によって、周知することにより、権利行使の機会の確保を図る点にあると考えられます。

第八百四十九条(訴訟参加)
「4 株主等は、責任追及等の訴えを提起したときは、遅滞なく、当該株式会社等に対し、訴訟告知をしなければならない。
5 株式会社等は、責任追及等の訴えを提起したとき、又は前項の訴訟告知を受けたときは、遅滞なく、その旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。
6 株式会社等に株式交換等完全親会社がある場合であって、前項の責任追及等の訴え又は訴訟告知が第八百四十七条の二第一項各号に掲げる行為の効力が生じた時までにその原因となった事実が生じた責任又は義務に係るものであるときは、当該株式会社等は、前項の規定による公告又は通知のほか、当該株式交換等完全親会社に対し、遅滞なく、当該責任追及等の訴えを提起し、又は当該訴訟告知を受けた旨を通知しなければならない。
10 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する株式会社は、遅滞なく、その旨を公告し、又は当該各号に定める者に通知しなければならない。
 一 株式交換等完全親会社が第六項の規定による通知を受けた場合 適格旧株主
 二 最終完全親会社等が第七項の規定による通知を受けた場合 当該最終完全親会社等の株主」

第5 電子公告の掲載時刻と公告開始日の関係  ― なぜ、問題となるのか。 ― 

 官報公告や新聞公告は午前0時ちょうどには掲載されていません。(官報公告については、現在のように国立印刷局のホームページに掲載されるようになる前から午前8時30分が公布の時刻であるとされており、現在もホームページに掲載される午前8時30分が公布の時刻であるとされています。)
 そのため、民法 第百四十条但し書「その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」の適用の余地はありませんでした。
 しかし、電子公告では、午前0時ちょうどに掲載することが技術的に可能であることから、同条但し書きの適用があり得ます。
   
 では、電子公告は必ず、午前0時ちょうどに掲載しなければならないのでしょうか。電子公告の制度が始まった平成17年頃には議論があったのですが、現在は 必ずしも午前0時ちょうどに掲載しなくてもよいということが、実務となっていると言ってよいように思いますし、午前0時ちょうどに掲載しなければならない法的根拠はみられません。

 すると、民法140条本文の初日不算入の原則の適用があり、午前0時ちょうどに掲載しない場合は、官報や新聞と同様に考えることができ、原則として、翌日の0時から期間計算が開始されることになります。つまり、法的に正確な公告期間としての期間計算は事実上公告を掲載した日の翌日から起算されることになります。
 ここで、よく問題となるのは、「公告の日」とは、いつかです。例えば、上記(2)①の796条3項の「公告の日」とは、具体的には、いつのことをいうのでしょうか。

第七百九十六条 (吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
「3 前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。」

午前0時ちょうどに電子公告を掲載した場合でない限り、ここでも次のような解釈が考えられます。
(例1:公告文面の右上の日付が12月22日で、12月22日の午前10時に掲載し、公告文面の本文に「反対の株主は、本公告掲載の日から2 週間以内に、書面によりその旨をお申し出ください。」などとと記載している場合)

  • 実際に公告を掲載した日(例では、12月22日となります。)

 法の文言を重視したものと考えることができます。しかし、2週間という期間を満たしていないのではないか、疑義が生じえます。

  • 実際に公告を掲載した日の翌日(例では、12月23日となります。)

 民法140条本文からは当然の帰結ですし、株主保護という本条項の趣旨を重視したものと考えることができます。しかし、文面には、翌日起算となることが明示されていないことから、疑義が生じうることに変わりはありません。

 そこで、次の方法が考えられます。

  • 実際に公告を掲載した日の翌日が「公告の日」(起算日)である旨を文面に明示

「反対の株主は、本公告掲載の翌日から2 週間以内に」、などと記載(例では、12月23日となります。)。「翌日から」は債権者保護のための公告では一般的に用いられている表現であり、整合的であるといえます。

第6 新設型組織再編に関する公告での注意点 ― なぜ、問題となるのか。登記申請との関係 ―

 前提として、新設型組織再編である新設合併(会社法2条28号)、新設分割(同30号)などでは、新設する会社の登記が会社成立の効力発生要件となっています(49条)(579条)。そして、例えば、新設合併の場合810条2項、3項の「公告をしたことを証する書面」は登記申請の添付書面になっています(商業登記法81条8号)。
       
 官報公告や新聞公告では、発行された日から数日以内には、「公告をしたことを証する書面」である掲載紙が登記申請者の手元に届きますから、登記申請までに余裕をもって準備することができます。
   
 しかし、上記 第4 1(2)②の「株券を発行する旨の定款の定めの廃止に関する公告」と同様に、電子公告の場合は、「公告をしたことを証する書面」である「電子公告調査結果通知」は公告期間終了日の翌日以降でないと、制度上発行できません。そのため、新設型組織再編において電子公告を利用する場合は、公告終了日から実際に「電子公告調査結果通知」が手元に届くまでの期間まで考慮して公告期間を定めておかないと、予定していた効力発生日に登記申請ができないといった事態が生じえます。
    
 新設型の組織再編以外でも、「公告をしたことを証する書面」である「電子公告調査結果通知」が登記申請の添付書面になることがあり、注意が必要ですが、新設型では、登記が効力発生要件となっていることから、特に注意が必要です。

※1) 電子公告でないと公告ができない場合
 次の場合は、「電子公告」により公告することとなっていますので、官報や新聞で代替することができません。

民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律施行規則(平成二十九年内閣府・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省令第二号)
(公告の方法等)第六条
「法第三条第一項の規定による公告は、電子公告(法第二条第一項第一号、第二号及び第九号に掲げる金融機関にあっては会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第三十四号に規定する電子公告をいい、法第二条第一項第三号から第八号まで及び第十号から第十六号までに掲げる金融機関にあっては公告方法のうち、電磁的方法(会社法第二条第三十四号に規定する電磁的方法をいう。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって会社法第二条第三十四号に規定するものをとる方法をいう。)によってしなければならない。」

※2) 電子公告調査を求めなくてもよい例外
 940条1項2号の公告(941条括弧書)以外にも次のものがあります。
 
銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)
第五十七条の三(電子公告調査の規定の適用) 
「銀行又は銀行持株会社に対する会社法第九百四十一条(電子公告調査)の規定の適用については、同条中「第四百四十条第一項の規定」とあるのは、「第四百四十条第一項の規定並びに銀行法第十六条第一項、第二十条第四項及び第五十二条の二十八第三項の規定」とする。」

― なぜ、問題となるのか。 ―
 例えば、銀行の従業員が新型コロナに感染したため、急遽、臨時休業等をする場合に、電子公告の調査を求める時間的余裕がないため、改正により、このような規定が設けられました。