電子公告 掲載後に変更等が生じた場合について

 電子公告を掲載した後に変更等が生じた場合は、どのように対応すべきでしょうか。
 これは、大きくは、法令に定めがあるものと、ないものにより、対応が異なります。

第1 法令に定めがあるもの :(例)吸収合併等の効力発生日が変更になった場合

1 根拠条項

 この場合は、会社法790条2項に基づき、その旨の公告を別途掲載し、その調査を求める必要があります(941条)。

第七百九十条 (吸収合併等の効力発生日の変更)
「消滅株式会社等は、存続会社等との合意により、効力発生日を変更することができる。
2 前項の場合には、消滅株式会社等は、変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、当該変更後の効力発生日)の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない。」

2 公告義務

 同条では、「消滅株式会社等」(782条1項により「吸収合併消滅株式会社」(1号)、「吸収分割株式会社」(2号)、「株式交換完全子会社」(3号))について規定されています。つまり「消滅株式会社等」には公告を行う義務があります。
 他方、「存続株式会社等」(794条1項)の「吸収合併存続株式会社、吸収分割承継株式会社、株式交換完全親株式会社」については、規定されていません。
 よって、「存続株式会社等」については、公告を行う義務はありません。

3 公告期間

(1)公告開始日

 上述のとおり、790条2項によれば、「変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、当該変更後の効力発生日)の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない。」とされています。

 この規定を分解すると、次のように整理することができます。
(ア)「変更前の効力発生日~の前日までに」= 効力発生日を延期する場合
⇒例えば、変更前の(もともとの)効力発生日が10月1日でそれを11月1日に延期する場合には、(もともとの)効力発生日の前日の9月30日(0時)までに公告を開始する必要があります。

(イ)「変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、当該変更後の効力発生日~までに」= 効力発生日を前倒しする場合
⇒例えば、変更前の(もともとの)効力発生日が10月1日であったものを、9月1日に前倒しする場合です。
 この場合は、当該変更後の効力発生日である9月1日の前日である8月31日(0時)までに公告を開始する必要があります。

(2)公告終了日

 これは、具体的には、いつになるのでしょうか。ここで、940条1項1号では、次のように規定されています。
  
第九百四十条(電子公告の公告期間等)
「株式会社又は持分会社が電子公告によりこの法律の規定による公告をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。
一 この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告 当該特定の日」

 そうすると、「当該特定の日」まで継続すべきであり、この日が公告終了日となります。そこで、「当該特定の日」とは、いつを指すのかが問題となりえます。

 これについて、登記情報544号などの法務省私見(以下「A説」といいます)では、次のように説明されています。

【A説】
(ア)効力発生日を延期する場合
  ⇒「当該特定の日」= 変更の効力発生日
   ・上記の例では10月1日(公告期間 9月30日~10月1日)
(イ)効力発生日を前倒しする場合
  ⇒「当該特定の日」= 変更の効力発生日
   ・上記の例では9月1日(公告期間 8月31日~9月1日)

 しかし、仮に公告の中断があった場合は、2日の公告期間(48時間)の10分の1(4.8時間)中断しただだけで、簡単に公告が無効となりかねません(940条3項2号)。
 これは、公告主体にとって酷ではないでしょうか。

【B説】
 そこで、「当該特定の日」を、次のように考えることも可能ではないでしょうか。
(ア)効力発生日を延期する場合
  ⇒「当該特定の日」= 変更の効力発生日
   ・上記の例では11月1日(公告期間 9月30日~11月1日)
(イ)効力発生日を前倒しする場合
  ⇒「当該特定の日」= 変更の効力発生日
   ・上記の例では10月1日(公告期間 8月31日~10月1日)

 もし、このように解することができれば、公告期間に余裕を持つことができるので、万一公告が中断した場合でも、そう簡単には中断期間が10分の1を超えることはないでしょう(必要性)。
 また、公告期間を長めにとったとしても、利害関係者等に対して不利益を及ぼすおそれはないと思われます(許容性)。

 そもそも、公告の有効、無効が争いになった場合、その最終的判断は裁判所が決定することになります。
 そのことから、あまりにも公告期間が短期間となるような場合には、万一中断が生じた場合のリスクヘッジ(裁判所による判断への期待)として、B説のような公告期間を設定し、調査機関の調査を求めておくことも、あながち不合理とはいえないのではないでしょうか。

第2 法令に定めがないもの

1 公告を掲載した後になって公告文面に誤りがあることを発見することがあります。

 このような場合、官報や新聞公告では、慣例として別途「取消公告」、「訂正公告」(以下「訂正公告等」といいます)が掲載されていますが、電子公告では、どうなるのでしょうか。

2 上記のように、訂正公告等は、もともと法令では規定されておらず慣例による公告といえるでしょう。

 しかし、官報・新聞と異なり、「公告すべき内容を規定した法令の条項」(以下「公告根拠条項」といいます。)のない独立した訂正公告そのものは本来認められていません。

 なぜなら、①電子公告では、調査委託者は、公告根拠条項を調査機関に示す必要があります(電子公告規則 3条3号ニ)。
 そして、②調査機関は、公告根拠条項を法務大臣に報告することになっています(同6条1項、会社法946条3項)。
さらに、③調査機関が発行する調査結果通知にも、公告根拠条項を記載しなければなりません(同規則7条1項1号)。

 つまり、公告根拠条項がないものは、電子公告では想定されておらず、上記①②③に不都合が生じるからです。
 なお、官報、新聞では このような問題は生じません。

3 そこで、誤りを発見した場合の対処方法としては、次のようなものが考えられます。

(1)公告のやり直し(2)掲載中の公告文面を訂正 (3)特に対処しない
 以下、それぞれについて、見ていきたいと思います。

(1)公告のやり直し

 間違いなどを訂正したうえで、正しい公告を改めて掲載し直し、再度、電子公告調査機関に調査を求める方法です。つまり、公告根拠条項は、もともとの公告根拠条項となります。
 ただ、この方法では、手間と日数、そして電子公告調査に係る費用が別途発生してしまうことになってしまいます。

(2)掲載中の公告文面を訂正

 これには、次のような方法が考えられます。
 ア 誤りを含む公告を取り下げて、正しい公告を掲載 = 公告文面の差し替え
 イ 誤りを含む公告の文章は変えず、同じ文面に「訂正とお詫び」などと誤った箇所を特定し、正しい文章を掲載する。 = 元々の文面に付加

 これらの方法は、手間と日数、そして電子公告調査に係る費用を低く抑えることが、可能となります。
また、公告根拠条項は、もともとの公告根拠条項を継続して利用することとなります。

 但し、公告期間が満了した後に誤りに気付いた場合は、この方法をとることはできず、原則として(1)の公告のやり直しをすることになります。

(3)特に対処しない

 誤りが軽微であることが明らかである場合などは、このような手段も考えられます。
 ただ、軽微かどうかの判断は困難な場合がありますので、法務局などに照会することが望ましいでしょう。

4 期間計算について

(1)原則

 公告のやり直しの時点又は訂正公告等を掲載した時点(正確には、その翌日(民法140条))から期間計算が開始されます(昭44・8・15民四733民事局四課長回答 参照)。

(2)例外

 誤りが軽微で公告の有効性には影響を及ぼさない場合は、当初の公告開始時点から期間計算が開始されると考えられます。
 しかし、やはり軽微かどうかの判断は困難な場合がありますので、法務局などに照会することが望ましいでしょう。