電子公告 虚偽の電子公告をした場合の責任ついて

第1 第三者に対する損害賠償責任

1 要件

 取締役及び執行役が、虚偽(※1)の電子公告(会社法440条3項に規定する措置や官報公告、新聞公告を含みます)を行ったときは、同人が注意を怠らなかったことを証明しない限り、第三者に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(429条2項1号二、430条)。
 これは、不実の情報開示に関する取締役及び執行役の責任であり、性質は第三者(会社債権者・株主等)の直接損害(※2)の一種ですが、情報開示の重要性及びその虚偽の場合の危険性から、429条1項の責任(※3)と異なり、過失責任とされ且つ証明責任の転換がなされ、取締役側で注意を怠らなかったことを証明する責任があります。
 ただ、虚偽の公告と第三者の損害との因果関係については、損害賠償責任を追及する側が負います。

(※1)
 「虚偽」には、積極的な虚偽の記載のみならず、必要事項の不記載・不記録も含まれます。
(※2)
 「直接損害」とは、直接第三者に損害が生じた場合をいいます。
 これに対比される「間接損害」とは、会社に損害が生じ、ひいて第三者に損害を生じた場合をいいます。
(※3)
 429条1項では、「悪意又は重大な過失」の証明責任は、損害賠償責任を追及する側が負います。

2 責任を負う者の範囲

 各取締役が合議において決定した場合は、共同して虚偽の記載をしたと認定される可能性があります(東京地判平成19年11月28日)。
 また、虚偽の記載等に関与しなかった取締役であっても、429条1項に基づく任務懈怠(監視義務違反)の責任を負う可能性はあります。

3 補償契約(※4)

 429条2項の責任については、429条1項と異なり、補償の禁止対象事項である「悪意又は重大な過失」(430条の2第2項3号)にあたらない場合は、会社との補償契約(430条の2)による補償の対象となる余地があります。

(※4)
 補償契約とは、株式会社が役員等(423条1項)に対して、①役員等がその職務の執行に関し、法令の規定に違反することが疑われ、又は責任の追求に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用や②役員等がその職務の執行に関し、第三者に生じた損害の賠償責任を負うことによる損失の全部又は一部を補償することを約する契約をいいます。

第2 罰則

 役員等が、電子公告に故意に虚偽記載をした場合には、罰則が科されます(976条2号)。

<参照文献>「株式会社法 第8版 江頭憲治郎」「会社法 第4版 田中 亘」