電子公告 電子公告の中断について

第1 電子公告の中断とは

 そもそも、電子公告の中断とは、どういうものでしょうか。
 その定義は会社法940条3項柱書にあり、次のように規定されています。

「電子公告による公告をしなければならない期間(以下この章において「公告期間」という。)中公告の中断(不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又はその情報がその状態に置かれた後改変されたことをいう。」

 つまり、電子公告の期間中、電子公告を閲覧することができなくなったり、電子公告が改ざんされた場合のことを指します。

第2 救済措置

 ほんのわずかでも電子公告が中断すると、その電子公告が無効になってしまうとすると、電子公告を実施する企業としてはそのリスクを避けるため、電子公告を採用することを躊躇し、電子公告の制度が利用されない恐れがあります。

 そこで、一定の要件を満たせば、「公告の効力に影響を及ぼさない」(同条同項柱書)とされており、その要件は、具体的には次のものとされています(同条同項各号)。

一 公告の中断が生ずることにつき会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は会社に正当な事由があること。
二 公告の中断が生じた時間の合計が公告期間の十分の一を超えないこと。
三 会社が公告の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、公告の中断が生じた時間及び公告の中断の内容を当該公告に付して公告したこと。

これら、全ての要件を満たした場合には、公告は無効とはなりません。

1 1号について

(1)前段「善意でかつ重大な過失がないこと」

⇒つまり、善意・無重過失が要件とされています。
 よって、軽過失の場合は免責される点で、注意義務の軽減が図られているといえるでしょう。

(2)後段「正当な事由があること」

⇒例えば、電子公告サーバのメンテナンスがあげられます。
 この場合は、「善意」(前段)でない場合、つまり「悪意」であっても免責されます。

2 2号について

「公告の中断が生じた時間の合計が公告期間の十分の一を超えないこと。」

⇒この「公告期間」とは具合的には、どの期間を指すのでしょうか。
 中断の計算の基礎となる中断時間の分母が問題となります。

A説:実際に電子公告を掲載した期間
 例えば、法定公告期間が15日間の場合、任意で5日長く20日間掲載した場合、20日間が分母と考えれば、2日までは中断が許されることとなります。
(なお、この場合でも、20日間電子公告をしたかどうかを、電子公告をした当該企業が証明することは通常は困難と思われますので、電子公告調査機関に調査を求めた期間が事実上の分母と考えたほうが、現実的ではないでしょうか。)

B説:法定の最短の期間
 同じく法定公告期間が15日間の場合、任意で5日長く、20日間掲載した場合でも、分母は法定公告期間と考えれば、1.5日までしか中断が許されないこととなります。

 では、これらA説、B説のいずれを採用すべきでしょうか。
 実は、「B説によるべき」といった見解が、私見とはいえ、法務省の担当者から示されています。(月刊登記情報546号等)

 従いまして、少なくともB説と解釈される可能性があることを念頭において、公告をされたほうが、リスクが少ないということができます。

3 3号について

(1)前段「会社が公告の中断が生じたことを知った後速やかに」

⇒「速やかに」とは具体的に、どの程度の時間的接着性を要するか、この文言だけでは不明です。
 一般論としては「直ちに」よりは、緩やかであり、「遅滞なく」よりは厳格と解すべきでしょう。

 また、実務では、中断が生じた日の翌営業日であれば、登記申請にあたっても問題とされたことがなく、「速やかに」といえると思います。
 しかし、これを超えたからと言って、即「速やかに」とは言えなくなるものでもないでしょう。
 そもそも、公告サーバがダウンしていれば、追加公告も掲載できません。
 難しい判断ですが、個別具体的状況に応じて、「速やかに」にあたるかどうか、判断されるのではないでしょうか。
 法は、不可能を強いるものではありませんから。

(2)後段「その旨、公告の中断が生じた時間及び公告の中断の内容を当該公告に付して公告したこと。」

⇒特に問題となりうるのは、「当該公告に付して」とは、どういう意義なのか、というものです。

 ここで、決算公告などでは、公告期間が5年以上の長きにわたることもあり(会社法940条1項2号)、決算公告とは別ファイル(=別URL)に追加公告を掲載されているケースが見られます。

 しかし、少なくとも法令上、電子公告の調査を義務付けられている電子公告(会社法941条)では、当該電子公告と同じファイル(=同URL)に追加公告を掲載すべきでしょう。

 なぜなら、電子公告調査機関において、当初の電子公告と追加公告は一体のものとして、電子公告の調査・証明を行うこととされていると解することができ、別々のものと解すべきではないと考えられるからです。(電子公告規則5条3項)