電子提供制度 電子提供制度とは

第1 電子提供制度とは

 「電子提供制度」とは、定款の定めにもとづき、取締役が株主総会の招集手続を行うときに、株主総会参考書類等の内容である情報を自社のホームページ等のウェブサイトに一定期間にわたり掲載する電子提供措置をとることであります。
(出典)法務省会社法改正パンフレット https://www.moj.go.jp/content/001327488.pdf

第2 株主総会参考書類とは

 株主総会参考書類とは、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類をいいます(会社法301条1項)。

第3 電子提供制度の概要

(出典)法務省会社法改正パンフレット https://www.moj.go.jp/content/001327488.pdf

第4 電子提供措置をとる旨の定款の定め

 電子提供制度を利用するには、会社は、株主総会参考書類等の内容である情報について電子提供措置をとる旨の定款の定めを設けなければならないこととされています(会社法325条の2前段)。
 
 なお、定款には、株主総会参考書類等を掲載するウェブサイトのアドレスを定めることは要さず、電子提供措置をとる旨を定めれば足りるとされています(同条後段)。

第5 電子提供措置の定義

 法令上、ウェブサイトについて特に限定されていないため、自社のウェブサイト以外のウェブサイト(※)に掲載する方法も含まれます。
 閲覧者がファイル(PDF文書等)への記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならないため、動画のみではこれに該当せず、プリントアウトすることができる方法でウェブサイトに掲載する必要があります。

※ EDINETの特例
 有価証券報告書提出会社が電子提供措置事項を含む有価証券報告書を、掲載期間開始日までにEDINETを使用して開示する場合には、当該事項については、電子提供措置をとることを要しておりません。

第6 電子提供措置の期間

 電子提供措置は、会社は株主総会の日の3週間前の日または招集通知(アクセス通知)を発した日のいずれか早い日(電子提供措置開始日)から、株主総会の日後3か月を経過する日までの間、継続して電子提供措置事項のウェブサイトへの掲載を行うこととされています(会社法325条の3第1項)。

第7 電子提供制度の運用開始

 2023年3月以降の株主総会より上場会社は電子提供制度が強制的適用されます(振替法159条の2第1項)。
 非上場会社でも適用可能です。

第8 電子提供措置の中断

 サーバダウンやハッキング等により、電子提供措置の中断(株主が電子提供措置事項にアクセスできなくなった場合等)が生じた場合においても、以下の要件を全て満たしたときは、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないとされています(会社法325条の6)。

  • 中断につき会社が善意無重過失又は正当な事由があること
  • 中断が生じた時間が電子提供措置期間の10分の1以下であること
  • 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に中断が生じた場合には、中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと
  • 中断が生じたことを知った後速やかに、中断が生じた旨、中断時間及び中断内容について電子提供措置をとること

 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に中断があり、かつ、上記要件を満たさない場合には、招集の手続に瑕疵があることになり、この瑕疵は株主総会決議の取消事由になる場合が考えられます。